なんか不思議な体験をしたので書いてみます。 昨日のことなんですけど、ゲームに使う背景写真を撮りにいこうと思って、 よさげな山を探しに出かけたんです。 一応は東京に住んでいる私ですが、私の家は東京でもかなりの西側の多摩地方。 山を探そうと思えば、すぐに行くことができるのです。 普段から私の移動手段はスクーターってことで、それに乗りながら なんとなく心当たりのある山を回っていたんだけど、 そんな中で、見知った山の隣くらいにある、 今までに入ったことに無い山を見つけました。 まーせっかくだしちょっと見に行ってみようかな。 と思って入ったらそこが大当たり。 私の大好きなさびれかかった建物やらが残ってる、 鉱山跡みたいなとこだったんです。 これはゲームに使える!って喜んで、 奥のほうへ入っていったんですけど、そこで更に大当たり。 なんか石ともコンクリートともいえないようなちょっと古い素材でできた、 地下道みたいなところまで発見しちゃったんです。 でも、その入り口の前では若者が三人、ひまそうにしていました。 うーん、なんだか声をかけられたら嫌だなあ…とか考えて、 見つかる前に離れようかとも思ったんですけど、 せっかくの優良物件を見つけたんだし…ここで帰るわけには! ってことで、少しおびえながらも地下道へ入ろうとしました。 でも、なんか止められるかなあ。とか思ってたんですけど、 そんなことは全くなくって、何事も無くあっさり地下道へ入れたんです。 ちょっと拍子抜けしつつも、その地下道の素晴らしいこと。 まさに私が求めている古さとデザインでして、 久々にすごい所を見つけちゃったよ!近場でこんなとこあったのかー! とか興奮気味でその地下道を通っていきました。 でも、この地下道はそれなりに日も差し込んでいるし、怪しい雰囲気でもなかったんで、 意気揚々と写真を撮りながら奥へ奥へと進んでいったんです。 うわ、階段がある!降りていくと何が…ってトイレと休憩スペースか。 もっと先にも通路があるなあ…これは行くしかない! とか思いながら、ちょっと興奮気味に あちこちレトロな雰囲気の残る地下道を進んでいったんです。 で、どこに繋がっているのかと思ったら、200mも進まないうちに 普通にハイキングコースみたいな山道に出ちゃいました。 地面はまぁよくある踏み固められた道って感じで、 コンクリ敷きではないものの歩きやすい感じでしたね。 あっさり外に通じていたこともあってちょっと がっかりもしたんですけど、今日は結構体調もよくって元気だし、 ま、せっかくだからもう少し進んでみようって思ってその山道を進んでいきました。 それでその道を進んですぐです。なんか前方に人影。 っていうか割と大勢の人。 何かと思えばたいしたこと無い、単に高校生くらいの人たちが 課外授業かなんかで登山中だったんです。 突然現れたたくさんの人に最初はちょっと驚いたんですけど、 近付いても私の姿をじろじろ見はするものの、そこまで興味を示すわけでもなく、 めいめいお喋りなんかして楽しんでいる様子。 その高校生たちは団体って事で進みも遅かったし、 私はうるさいのも苦手だったからさっさと脇を抜けて、 さらに上へと登っていったんですね。 で、高校生の一団から離れて、もう少し進んだところで、 今度は二人の男の人たちと会ったんです。 普通の登山客って感じの二人組みで、私が近付くと、 「や、こんにちは」 と、気さくに声をかけてくれました。 私も、それに応じるように挨拶を返すと、 山で一人歩きをしている私に興味を持ったのか… 「ずいぶん変わった格好をしているねえ」 って、話しかけてきたんです。 確かになるほど、私は別に本格的に登山をしにきたわけじゃないので、 ごく普通のコートを羽織って山の中を歩いていたわけです。 「ちょっとした散歩のついででして〜」 と、私は返したんですけど、さすがに「山をなめてはいけないよ」とか 注意されるかなーとか思ったら、全然そんなことは無くって、 「そうなんですか。寒かったらカイロとかもお分けしますからね」 と、とても親切にしてくれたんです。 そのあと、一緒に登ることになって、お話しもしました。 彼らは大学の教授とその助手で、研究で使う材料を探しにきていることとか、 ここ数年の山の環境の変化も調査していることとか。 そうそう、地下道に入り前にいた若者三人は彼らの生徒なんだそうです。 ふもとで車を停めていて、待機させているんだとか。 そんなことを話しているうちに、道がだんだん悪くなっていきました。 手入れが悪いというよりは、なんか砂が多くなって、 道の上にかぶさってきているんです。 「あー、だめだこりゃ、先にはいけないね」 先頭を行く教授が言いました。 「土砂崩れおきてますね」 もう一人の助手風の男の人も言いました。 なるほど、少し先を見ると完全に道が土砂でうまっちゃっていました。 先に進むのはあまりに危険というのは素人の私でも分かりましたし、 結構歩いていて、もう目当ての古い建物とかは、 この先には無さそうな雰囲気だったので、私も潮時だと思って 「私はここで引き返しますね」 と、言うと、大学の二人も頷いて、残念だけど戻ろうと賛同してくれたんです。 そんなわけで道を引き返したんですけど、 どうやら思っていたよりは距離を歩いていたわけではなかったみたいで、 物の数分で高校生の集団に再会したんです。 「君たちは頂上まで行くつもりかい?この先は土砂崩れが起きていたから危険だ。戻ってください」 と、教授が言いました。 高校生集団の一番前にいた、引率の先生はすぐに状況を察したらしく、 全員、戻れ!と素早く指示を出して、全体をふもとへと誘導しだしたんです。 それで、結局高校生の集団と大学教授と助手の面々は例の地下道まで戻ってきたんです。 そのとき、さすがに私はちょっと疲れていたもので、 高校生の一団が通っていくのを待ってからにしようと思って、 地下道の中にある休憩スペースみたいな場所に腰をかけていたんですけど、 教授と助手もそれに付き合ってくれて、飲み物をくれたりなんかしてくれたんです。 私は何度も感謝を述べて、いい人もいるものだなあ…と、 今日の収穫と一緒に、楽しい思い出も出来たなーと、満足していました。 それで、しばらく休んでいたら、ふと教授も助手も立ち上がって、 地下道の中にあるトイレに行くと言い出したんですね。 ええー…ここのトイレめちゃくちゃ古いじゃん… 水とか出るのかなあとか思いつつも、 まぁ止めるほどでもないかと思って、二人を見送ったんです。 それで二人がトイレに入った数分後。揺れたんです。 明らかにまずい感じの揺れでした。大きめな縦揺れ。 大震災もあったことで、横揺れよりも縦揺れのほうがまずいって記憶にあったんで、 これはもう絶対危ないってことで、私は早く外に出ないと!って思って、 少し揺れが収まったのを感じたので、入り口側のほうへ走っていったんです。 トイレに行ったはずの教授と助手の二人は気になったけど、 素人の私よりは判断が早いだろうと思って、 私はとりあえず一人で入り口に行くことにしました。 途中、高校生の一団にも差し掛かりましたが、 みんな、揺れに戸惑っているような感じで動こうとしていません。 「動いたほうがいいよ!」と声をかけたのですが、 彼らはどうにも動こうとしない。 しょせん素人の私ですから、そもそも下手に動くべきではないのかも? などとも思ったのですが、揺れの恐怖から勝手に足は外へと向かっていました。 まだ揺れている地面に足を取られそうになりながらも 地下道をまっすぐ進んで、最後に、階段をかけ上がる。 階段の途中ではやっぱりその場に座り込んだ高校生たち。 もう、声をかけても無駄だろうと思った私は階段を上へと進み続けました。 そして、本当に最後の最後、入り口が見えたところで、 なんということか、どかん!という、大きな爆発音とともに、 入り口が崩れ、シャッターのような波打った金属板が塞いでしまったのです。 一瞬にして入り口の光が小さくなって、わずかな隙間から漏れる光だけになってしまいました。 あぁ…あと一歩のところで…と、思い、絶望しかけた瞬間でした。 あの外にいた、教授たちの生徒がその板を避けて、こっちに手を伸ばしてくれたのです。 私はもう、必死になってその手をつかみ、引っ張り出され、なんとか脱出できました! ほっとするのもつかの間、今まで私のいた地下道は、 もう一度大きな爆発音を出して、ついにぐしゃりと崩壊してしまったのです。 あぁ!まだ中には高校生たちが!教授は!?助手の人もまだ!? と混乱しかかった頭のまま、慌てている私を生徒の一人が押さえつけて、 暴れるな!落ち着け!と叫んだのです。 私はその声になんとか従おうと、がくがく震えながら頷いていました。 そんな中、その生徒たちはなんとか残された人たちを救おうとしたのでしょう。 崩壊してしまった地下道の入り口、ひしゃげてしまった シャッターの金属板をもう一度持ち上げて、中へと入ろうとしていました。 ですが、さすがにそれは無謀なこと。 その金属板をなんとか持ち上げたものの、中からわずかに見えた空洞では、 すでに、何人か生き埋め状態や、無残に潰れてしまった人影があるだけでした。 私はその悲惨な姿を見て、ほとんどパニック状態になって、 腰を抜かしていたのですが、三人の生徒はその悲惨な現場を見ても、 落ち着いて、大丈夫か!と声をかけていました。 そして、どうやら一人、あの状況の中でなんとか生きていた少年がいたようで、 土まみれではありましたが、一人引っ張り出されてきました。 少年はかろうじて生きてはいるものの、頭には大怪我で大量出血。 今すぐにでも治療が必要なのは私でも分かりました。 人間ってのは不思議なもので、そんな状態の少年を見た瞬間、 腰を抜かして震えていただけの私も、なぜか急に落ち着きだして、 携帯電話をポケットから引っ張り出して、110番。すぐさま警察に電話をしたのです。 (今思えば、救急車をなんで呼ばなかったのでしょうか…) すぐに警察は電話に出てくれて、私は崩壊事故が起きた!と伝えたところ、 冷静に場所はどこですか。わかりますか。と担当の人。 私は、すぐに隣にいた見覚えの無い老人に、 この場所は分かりますか!?と伝えたのですが、 その老人は首を横に振るだけでした。 私は震えながら、わかりません!でもどこかの山で地下道があるんです! と伝えましたが、さっき場所を聞いた老人に携帯電話を取り上げられ、 終話ボタンをおされてしまい、電話を切られてしまったのです。 私は驚いて、携帯電話を取り返そうとしたのですが、 老人は、特に身構えもせずに、私に携帯電話を返しながら、 「事故は起きてないよ」 と言ってきたのです。 何を言っているのか!と思いながら、地下道をもう一度見ると、 不思議なことに、さっきまで崩壊の衝撃で砂埃が舞い、 煙をあげていた地下道が…普通に十字に貼られた板で封印されていたんです。 あ、れ…?なんで? そもそも、この老人は誰? さっきまでいた生徒三人や、助け出された高校生の少年は? 老人しかいない、地下道の前で、 私は何がなんだか分からなくなってしまいました。 もう一度腰を抜かした私に向かって、老人は言います。 「たまに”あの時”に行ってしまう人がいるんだ」 …と。 改めて私は老人の姿を見ると、彼の頭は後頭部がひどくへこんでいて、 なにか、昔大怪我をしたような感じで… 私が何も言えずに口をぱくぱくさせていると、 老人はただ、 「そろそろ帰ったほうがいいよ」 と言ってきたのです。 振り返ると、私のスクーターが変わらずそこに停まっていて、 そうだ、確かに帰らないと。と、やたら強く思った私は、 ぼんやりとした頭のまま、それに乗って、 まっすぐ伸びた道を進んでいきました… しかし、まっすぐに進んでいくものの、 どうにも見覚えの無い道が続いています。 おかしいな。さすがにそこまで知らない道を通ってきたわけじゃないのに… そんな風に思いながらも、やっと一軒コンビニを見つけて 店内に入って、道を聞こうと店員さんに話しかけたところ、 また腰を抜かすほど驚くことに。 なんと、私の今いる場所は栃木の山間道とのこと! そこまで移動していた記憶は一切無く、 ほんの1時間くらい移動していた感覚だったというのに、 すでに、丸一日が過ぎて、一周して夕方になっていたのです。 最初に言ったとおり、東京の多摩よりに住んでいる私からすれば、 確かに一日あればスクーターでも行けない距離ではないものの、 まさか一晩走っていたなら気付かないはずなどないはずです。 土地勘が無い場所で家に帰るのは結構大変なもので、 帰ってきたのがつい先ほどのこと。 散々写真を撮ってきたはずのデジカメも持ってないし、 もうあの山には行こうと思っても行けないんだろうなあ…とかぼんやり思っています。